『  この空の下  ― (2) ―   

 

 

 

 

 

*****  新春パロディ劇場     苦手な方 引き返してくださいね  ******

 

 

 

 

  コツ コツ コツ ・・・  コツ ・・・

 

ヴェロナの街を青年が二人 肩を並べて歩いてゆく。

「 さあ 元気だせ ジョー。 なにをそんなに塞ぎこんでいるんだ? 」

黒と銀のチュニックに身をつつんだ細身の青年が 友人に話しかけている。

「 え ・・・ いや ・・・ ちょっと 」

「 ふん?  さっきの騒ぎ ― 気にしてるのか 

「 え  いや ・・・ 」

「 悪かった。 余計な事をしたな。 お前に任せておくべきだった。

 私のおせっかいだった。 すまん。 」

彼は さらりとした黒髪を揺らし素直にアタマをさげた。

「 あ そ そんな カタリーナ! 君のせいなんかなじゃないよ〜〜

 あそこで君がきっぱりやってくれて シメシが付いた。 」

「 そうか  それなら いいが。 

「 ああいう手合いには ある程度の実力行使は必要だよ。 」

「 まあ な。 あの野郎どもには話合いなど無駄だから 」

「 ウン ・・・ 

また 茶髪の青年は言葉を切って黙り込んでしまった。

「 おい〜〜〜〜 いったいどうしたってんだ??

 おい 吐け!  ジョー〜〜〜 私は気が短いんだ〜〜〜 」

「 カタリーナ。  あの ・・・ 実は だな 」

「 だから なんなんだ??? ジョー きみはなにを悩んでいる? 」

「 ・・・ ウン ・・・  あそこに いただろう? 」

「 あそこ?  ああ さっきの広場に か  

「 ウン。 ケンカの現場に 最初に飛び出してきた少年がいたんだ・・・

 細っこいけどしなやかな身体つきで 金色の髪を揺らしてた・・・ 

「 ? ・・・ あ〜 ・・・ いた かもしれないなあ  

 その少年がなにか? 」

 

    「 ぼく は。   あの少年に一目ぼれ してしまった・・・・」

 

「 ・・・へ???   あ〜 好感を持ったってことか  」

「 いや ・・・ ぼくの心臓は ― 舞い上がったんだ〜〜  」

「 まあ そういうこともあるだろうよ。 」

カタリーナは なんだそんなことか・・・拍子抜けした顔をした。

しかし 当のジョーはもう真剣の極み・・・

ついに足は止まり 道端に立ち尽くしてしまった。 

「 でも  美少年 だぞ?? ぼくにはそういう性癖があったのか?? 」

「 なんだ? 」

「 ・・・ ぼくは! カワイイ女の子が好きな色男だと思ってたのに〜〜 

「 なにをごちゃごちゃ独り言 いってるんだ? 」

「 い  いや ・・・ ぼくは  美少女を愛したいんだ〜〜 

「 は!  なら こんなとこで頭抱えていたら ダメだ。 

カタリーナは珍しく に・・・っと笑った。

「 ?  な なに ?  なんだい?? 」

「 今夜 とある大きな邸で大舞踏会がある。 仮面舞踏会だ。 」

「 仮面?  ・・・ってことは 」

「 そ! 仮面さえつけてそれなりの身なりなら 誰だかわからないってことさ。

 ちょいと覗いてみないか? 」

「 ・・・ どこの邸だい 」

「 ふふふ ― アルヌール家だ。 」

「 !  そりゃ ・・・ いくらなんでもマズいよ カタリーナ。

 我々とアルヌール家とは ― ずっと対立しているじゃないか。

 ぼく自身は敵対心なんかもってないけど 」

「 だろうな。 ― 無駄な争いは 止めた方がいい。 」

「 うん、ぼくもそう思う。  このヴェロナの街は広いし豊かだし ・・・

 両家で盛り立ててゆけばいいんだ。 」

「 そりゃ お前の代での仕事だろ。 な〜〜 とりあえずちょっと・・・

 覗いてみようぜ?  」

「 え ・・・ でも 

「 可愛いレデイ達を見れば ― さっきのお前の妙〜〜な悩みは すっ飛ぶ。 」

「 そ そっかな ・・・ 」

「 ああ。  とびきり凝った仮面をつけて いざ参上! 

 ひゅん !  カタリーナは マントを豪快に振った。

「 あは そうだね。  ・・・ でも カタリーナ、 きみは美女を眺めて楽しい?

 だって君はそんな形をしているけど いや勿論とてもよく似合ってるけど・・

 でも 君は女性じゃないか。 」

「 ふふん、 ウツクシイものを見るのは気分がいいものさ。 そうだろ? 」

「 うん  でも カタリーナも美しいドレスを着ればどこの姫君にも負けないよ?

 ― ぼくは ・・・ へへ ・・・ 今の君が ・・・ その〜〜好き だけど 」

「 うん? なんだって? 」

「 あ〜〜〜 いや こっちのことだよ。 それじゃ二人で舞踏会に 」

「 そうこなくちゃ。  吟遊詩人とその友 って触れ込みはどうだ? 」

「 し 詩人?? ・・・ 剣客のがよくない? 

 余興に 詩をひとつ、吟じてくれ・・ なんていわれたらどうするのさ 」

「 あっはっは それは考えなかった〜〜〜

 それじゃ 剣客ってことで 」

「 カタリーナ、 君は剣舞を踊ればいい 」

「 いやあ〜〜 ま 目立つことは避けよう。 

 華やかな舞踏会の雰囲気を楽しめばいいんだ。 ジョー、君の気晴らしだからな」

「 忝い・・・ ぼくはいい友を持ったよ 」

「 ・・・ 友 か ・・・ 」

「 え? なに? 」

「 いや なんでもない。 さ 市場で洒落た仮面でも調達しよう。 」

「 ああ そうだね。 どんなのがいいかなあ〜  

ジョーは < 友 > と肩を叩き合いつつ賑わう市場へむかった。

 

 

 

 

 ざわざわ ざわざわ   ♪〜〜〜♪ ♪

 

大広間からは陽気なざわめきと共に 優雅な楽の音が流れてきている。

 

 ― ○○伯爵さまのおつきい〜〜   △△様〜 ご到着〜〜

 

あはは  うふふ  ほほほ  くすくすくす・・・ 

高笑いやら扇の影の忍び笑いがそこここで揺れている。

シャンデリアの光が 女性たちの首に 耳に 腕に 注ぎ 

そこここでチカリ チカリ 輝石が瞬く。

男性たちも装いを凝らしている。

革ベルトには象嵌を施したり輝石が埋め込まれていたり 

螺鈿の飾りボタンをつけていたり・・・華麗だ。

オトコもオンナも 今夜この邸の舞踏会でお目当てのヒトを探そうとしているのか 

一夜のアバンチュールを楽しもうというのか・・・?

 

アルヌール家の大広間は 熱気に満ちていた。

 

「 うわ〜〜〜 華やかだなあ 」

「 そうだな。 ほう〜〜 美しいお嬢さんが多いな。 

「 ウン。  へえ ・・・ アルヌール家ってなんでもキレイなんだね 」

「 ああ。 部屋の装飾も華麗だな。 うん・・・さすがに姫君のいる邸だな 」

「 あ そうなんだ? 」

「 私もウワサで聞いただけだが。 跡取りの若君と妹姫の二人、のはずだ。 」

「 ふうん ・・・ ぼく 姉妹がいないからよくわからないけど ・・・

 あ なんか音楽が変わったね? 」

「 ?  本当だ ・・・ ダンスが始まるのだろうな。

 おい 目立たないように隅にいよう。  お前・・・ 踊れないだろ ジョー? 」

「 えへ ・・・ 実はね〜〜   あ こっちの柱の影がいいかな 

「 ああ そうだな。  うん ジョー、お前 案外仮面が似合うぞ 」

「 そうかな〜〜 でも鬱陶しいね。 」

「 仕方ないさ 一応  仮面舞踏会 だからな。 

 ほら ・・・ あっちの隅にいるのは 炎の髪のジェットだろうよ 」

「 え〜〜〜 アイツがあ?? アイツってばウチい出入りしているんだよ? 」

「 ま 一応仮面はつけいるし ちゃとした身なりだからな。

 拒絶する理由はない。 アルヌール家の方も見て見ぬフリだろ 」

「 ふ〜ん  じゃ ぼく達だってお行儀よくしていれば いいってことだね 」

「 ああ。 そもそも我々は覗き見を楽しみにきただけだ。

 舞踏会の雰囲気を壊してはいけない。 」

「 ウン。 いい気晴らしになるよ〜〜  わあ こっちにもキレイなお嬢さんたちが

 いっぱいいるね〜 

「 ふん ・・・ 当家の令嬢の友人たちだろう 」

「 ふ〜〜〜ん  あ ダンスが始まったね 」

「 カドリールだな〜  ふふふ  お相手の品定めには最高だろう 」

「 ふうん ・・・ ま ぼくは踊れないから丁度いいや。 」

ジョーは仮面をしっかりつけ直し、隅っこから観賞している。

広間では 紳士 レディ たちが次々に進みでて 踊る。

やがて  白のドレスも初々しい姫君が 進み出てきた。

「 ふん?  あの・・・彼女、上手いな。 

「 カテリーナ どれ? どの人?  」

「 今 部屋の中央に来た白いドレスさ。 

「 あ〜 キレイな金髪だねえ・・・  ???  あ !?  

彼はそれまでぼ〜〜っと眺めていたが 顔付が変わった。

「 なんだ どうしかしたか? 」

「 !  う  そ ・・・ ! あの人だ! あの人! 

「 なに? 」

「 昨日 街の広場にいた! あのゴロツキたちに絡まれたとき 

 最初い飛び出して来ようとした ・・・ 少年! 」

「 ・・ あ〜 あのお転婆かい 」

「 !?  おてんば??  彼は ・・・ 彼女 だったのかい??  」

「 ジョー ? お前 わからなかったのか???  」

「 ぼくは。  あの美少年は 彼 だと ・・・ 」

「 ははは 傍からみたら意味不明な発言だぞ? 」

カタリーナは 可笑しくて仕方がない、といった風情だ。

「 ぼ ぼく!  ちょっと踊ってくる〜〜〜!!! 」

「 あ おい ・・・ !  お前 カドリール 踊れるのか?? 」

「 ― 踊りたいんだ〜〜〜 あ シツレイ 踊らせてください 

ジョーはぎこちない足取りで それでも丁寧な物腰でダンスに加わった。

 

「 ごきげんよう 〜   あら いらっしゃいませ  ご機嫌よう〜 」

 

白いドレスの女性は、 勿論仮面をつけているが パートナー達に満遍なく

輝く笑みを向けている。

 

「 あ!  あの。  ご ごきげんよう  姫君。 

 

次のパートナー、茶髪の青年がおずおず・・・・と手を差し伸べた。

「 ごきげんよう   !  あ  あの ・・・・ 」

「 はい? 」

「 ぼ ぼくを お 覚えていますか?? 」

「 ・・・ どちらの殿方でしょう?  温かい瞳をお持ちね 」

「 あ あの! お目にかかったことがあります! 」

「 まあ どこでかしら 」

「 あ あの !  ヴェロナの街 ・・・ ひ 広場 で 」

「 え? 」

白いドレスの姫君の ステップが止まった。

 

    !  ・・・ あ あなた なの??  あの!

 

    そうです。 ぼくです!

 

    お お名前は ・・・? 

 

    覚えていてはいただけませんでしたか

 

    ごめんなさい ・・・ ヴェロナの広場で?

 

    ええ。 あの ― ケンカの現場で

 

    ! あ あの 強くて素敵なお姉さま と一緒にいた方?

 

    そ そうです!  ぼくの名は  ジョー。

 

    わたし は フランソワーズ。  当家の娘です

 

    ! え ええ っ?  アルヌール家の方 ですか!!

 

    はい。 貴方は  ジョーさま

 

    ぼく は。  シマムラ家の 跡取りです。

 

    え  ええ ???

 

    ぼく ・ わたし 達は  ―  対立する家の???

 

    そ  そんな 

 

    そんなことって ・・・!

 

 

二つの視線が絡みあい 言葉のいらない想いが交錯する。

若い二人は 大広間の賑わいの中で完全に別世界に いた。

 

「 ?  あら? 列が進みませんね? 

「 うん?  あ〜 あそこが止まっていますね、 失礼? 」

「 お嬢さん? 次の方のお手をとっていただけませんか? 」

「 セピアの髪の・・・ あら剣客さんかしら? どうぞ進んでくださいな 」

 

宴をスムーズに進めようと ダンスを眺めていた年嵩の人々がさり気なく手助けをする。

 

「 あ ・・・ 失礼いたしましたわ。 ごきげんよう ・・・ 」

「 ・・・ ああ ! ・・・ また お目にかかれます か! 」

「 ・・・・・・ 」

「 ・・・・・・ 」

二人は 言葉を発せず ただ ただじっと視線を合わせ そして ふ・・っと逸らせた。

 

 

  ざわ ざわ ざわ

 

ご機嫌よう〜〜   よい宴でしたわ   また ・・・

 

舞踏会は盛況のうちにお開きとなった。

参加者たちは 陽気に楽しい雰囲気と共に仮面もつけたまま 

三々五々家路につく。

 

大邸宅の前には多くの馬車が待機しているが のんびりと散歩がてら

帰路を辿る客人たちも多い。

そんな中に 茶髪と黒髪の二人の青年もいた。

「 ・・・ ふう 〜〜〜   

「 なんだ? また溜め息か ジョー。 」

黒髪が少々呆れた顔をしている。 頬がほんのり紅潮している。

「 え ・・・あ ああ・・  君はいつも冷静だなあ カテリーナ。 

「 そうか?  私も結構楽しんだぞ。 」

「 あ〜 どこかの姫君を誑かしたのかい 

「 ははは ・・・ 向うが勝手に熱い視線を向けてきただけだ。 」

「 へえ〜〜 ・・・ ふう ・・・ 

「 なんだよ?? 気晴らしに来たはずじゃなかったのか?? 」

「 ウン ・・・  

「 意中のヒトに会ったのだろう?? あの白いドレスのお嬢さんに さ。 」

「 ・・・ ウン ・・・ でも あの人は ・・・ 」

「 どこの令嬢かい。 ジョーの家柄ならどんな令嬢でも 」

「 ― ・・・ ダメなんだ ・・・ 」

「 ??? 

「 ・・・ ごめん、カタリーナ。 ちょっと一人になりたい ・・・ 」

「 疲れたのか? 早く帰ろう。 

「 ごめん ・・・ 」

ジョーは 仮面を外すと重い足取りで家路を辿った。

 

 

 

 ― その夜。  シマムラ家の大邸宅の奥、若君の私室では

 

  カサ ・・・・ ゴソ ゴソ ゴソ・・・

 

 ふう〜〜〜 ・・・ 

 

豪華な寝台の中からは リネンの音とため息がず〜〜っと聞こえている。

「 ・・・ 眠れない ・・・ 眠れない・・・

 あの人の顔が あの人の声が  アタマの中から消えない ・・・ 」

 

 ガサ。 茶髪のアタマがリネンの海から起き上がった。

 

「 ふう ・・・ ダメだ。 眠りの精からは見放されたらしいな ・・・ 」

くしゃ くしゃ と長めの前髪をかき上げ 彼はまた大きくため息を吐く。

「 よし・・・!  もう一回、 あの姫に会うんだ! 

ついに彼は意を決っし立ち上がった。

「 会って ― 本当の気持ちを伝えたい。 そうしなくちゃ ぼくは ・・・・

 ぼくはもう一生眠れない ・・・  」

彼は くっと口を結び着替え始めた。

 

  ほ〜・・・・ ほ〜〜 ・・・ 窓の外では夜の鳥の声が響いている。

 

 

 

 カタン ・・・ 窓を開けると 少しは涼しい風が入ってきた。

 

「 はあ ・・・ どうしたのかしら・・・ ちっとも眠れないわ 」

ひらり。 白い夜着の裾が揺れ 華奢な素足がのぞく。

「 ふふ ・・・ 気持ちいい ・・・ ああ でもちっとも身体が冷えないわ

 そうよね ・・・ わたしの心が熱くなっているですもの ・・・ 」

ふぁさ。 金の髪が揺れ すこしピンクに染まった頬がみえる。

「 ・・・ ああ 眠れない ・・・ あの方のお顔が お声が

 ずっとわたしの心の中に住んでいるの。 ずっとわたしの気持ちを揺らすの 」

 

   はああ ・・・・  可憐なため息が豪奢な邸の空へ抜けてゆく。

 

コトン。  彫刻を施したバルコニーに 彼女はそっとその身体を預ける。

 

 

     ジョー   おお  ジョー・・・ 

     あなたは どうして  ジョー  なの?

 

うっとりした眼差しを夜の空の向け フランソワーズはこそ・・・っと呟く。

 

     ジョー ・・・  ああ  ジョー・・・

     なんて素敵なお名前 ・・・

 

     でも ― あなたは シマムラ家の方。

 

     あなたは どうして ジョー なのですか・・・!

 

 ふううう ・・・ 熱いため息に哀しい色が濃く混じる。

    

     シマムラ ・・・ ああ あなたはその名を捨てられる?

     そんなこと できない できっこないわ・・・

 

     ああ ああ  ジョー

     あなたは どうして ジョー なの??

 

「 ぼくは ― ! 」

 

突然 夜の底から声が返ってきた。  

「 !!!  誰??? そこにいるのは  ―  誰?! 」

彼女は一瞬 恐怖に襲われ身を竦めたが すぐに毅然として問いかえした。

「 ここは ― わがアルヌール家の庭よ? 入りこんでいるのは 誰ですか! 」

 ガサ。  庭の植え込みから人影が現れた。 暗くてよく見えない。

「 ぼくです。  ジョー ・ シマムラ。 」

「 !!!  ・・・ ジョーさま ・・・? 」

「 はい。  フランソワーズ姫! 今 そこに参ります! 

「 え ええ??? 」

  ガサ ゴソ ゴソ ゴソ・・・ グラリ。

バルコニー横の棕櫚の木が揺れた。 

「 あ あら・・・!  まあ どうぞ気をつけて・・・ 」

「 大丈夫です、これでも身は軽いんです。 姫 ・・・ 今 お側に! 」 

「 ちょっと! 危ないわ ジョーさま。 わたしが降りてゆきますから 

「 え??? で でも 姫君〜〜 」

「 うふふ・・・わたし ここから抜け出すのには慣れていますの。

 カーテンを使って・・・・なんていいましたけど、 いつもはこの棕櫚の木をつかって

 出入りしてるんです。 

「 い いつも??  出入り?? 」

「 はい。 少年の服で ・・・ うふふ 兄のお古ですけど ・・・

 ここから街に出て いろいろ見聞を広めていますの。 」

「 ― すごいですね〜〜〜  姫君 」

「 うふふ♪ 邸に籠っているだけじゃ な〜〜んにも面白いこと、ありませんわ。

 ばあやは金切声を上げて怒りますけど ・・・

 ジョーさまあ〜〜 今 降りてゆきます〜〜〜 」

「 わ? わわわわ・・・・ 」

 

   ぽ〜〜〜ん ・・・ !  

夜目にも艶やかに? 白い夜着姿が棕櫚の木を伝い降りてきた。

 

「 あ あぶない〜〜 

「 きゃ〜〜 受け止めて〜〜 」

「 あ は はい〜  うわッ 」

 

  ぱふん。  ジョーは腕の中に嫋やかな身体を抱きしめた。

 

「 うふ〜  ありがとうございます 

「 うは〜〜〜 ・・・ ああ ・・・ 貴女だ! 今夜の舞踏会で一番目立っていた・・・ 

いや 街中の喧騒の中でも 一番輝いていた 貴女だ! 」

「 ジョーさま♪ ああ 瞳と同じに暖かい方 ですのね。

 わたしが探していたものは ― この温もりをもった方 ジョー様 あなたですわ。」

「 ぼ ぼくは!  なんとかして貴女と そのぅ ・・・ 一緒に 」

腕の中に愛しい人を抱き ジョーは頬を染めている。

「 一緒に? 」

「 あ はい あのぅ〜〜 そのぅ〜〜〜。 ぼくは シマムラ家のモノで

 あなたはアルヌール家の姫君だけど  ― 」

「 ― わたし!  アルヌールの名を 捨てますわ! 」

「 そ そんなこと できますか 

「 できます。 だって ― アナタを愛しているから。

 ね! 今から駆け落ち しません? 」

「 え い 今から?? ・・・姫君は夜着じゃありませんか。

 ぼくだって サイフも剣ももっていません、馬にすら乗ってきていない。 」

「 あ う〜〜ん そうねえ・・・ 」

「 そうだ!  貴女は教会のミサに参加なさるでしょう? 」

「 はい。 ギルモア神父様にはいろいろお世話になっていますわ 」

「 それはいい! なら 明日 ・・・ 教会で落ち合いましょう!

 そして ギルモア神父様に相談して 

「 まあ♪ うふふ〜〜〜 ねえ 結婚しましょう! 」

「 え!?!? け けっこん?? 」

「 はい。 神父様に祭式をしていただいて・・・ 永遠の愛を誓ってくださいますね?

「 え え〜〜と・・?? 」

「 あら! あなたの心はウソですの?? ただの遊びだと・・・ 

「 いやいや! この世で愛する人は 貴女だけです! 」

「 そう! それなら ・・・ 明日、教会の神父さまのところで会いましょうよ 」

「 わかった。 ぼくはその時 ― あなたに け 結婚を 」

「 神さまの前で 二人で永遠の愛を誓いましょ! 

 わたし なんとかして邸を抜け出します。 」

「 ぼ ぼくも ・・・  頑張ります。 」

「 それじゃ 明日♪ 楽しみにしていますね 」

 

   ちゅ。  ピンクの唇がジョーの頬に落ちた。

 

「 うわ〜〜〜〜〜 わわわわわ ♪ 姫 〜〜〜  ??? あ あれ??? 」

ジョーは ほわ〜〜〜ん ・・・としていたが ふっと気がつくと 彼女の姿がない。 

「 ひ ひめ?? フランソワーズ姫〜〜〜 」

きょろきょろしていると ・・

「 ここよ〜〜〜  ジョーさま〜〜〜 」

「 ここって ・・・ う わあ〜〜〜 」

棕櫚の木の天辺近くに 白い夜着が揺れ、可憐な姿が見えた。

「 ・・・ ひ  ひめ ・・・ 」

「 ジョーさま♪  あ 明日 〜〜〜!!! 」

 

   ひらり。  ― 彼女の姿はテラスの中に消えた。

 

「 ・・・ フランソワーズ !  ぼくの運命の女性 ( ひと ) !

 ああ ぼくはきみのためだったら なんだってできる!

 そうさ シマムラの名を捨てることだって! 

 うん、 明日 きっと神父様のところで ― 愛を、永遠の愛を 誓う よ! 」

 

  ふう ・・・   

 

今度は熱い熱いジョーのため息が ヴェロナの夜に立ち上っていった。 

 

 

 

  カタン −−−−

 

ギルモア神父は 御御堂のドアを静かに閉じた。

「 ・・・ 今日は誰も訪れる予定はないでの。 安心するがいい。 

「 神父様! 」

アタマからコートを被った < 少年 > が 高い声をあげた。

「 よくここまで来られたな、フランソワーズ嬢。 」

「 うふふ・・・ お兄さまの服を借りて こっそり出てきました。

 町に出れば誰もわたしとは気がつきません。 」

「 そうか・・・ しかし家の方々に心配をかけるのは感心しませんぞ。 」

「 でも ・・・ 」

「 神父さま! ぼくが  ぼくが誘ったんです。 神父様に助けていただきたくて 」

マントで立派な身なりを隠してきた青年が 口を開いた。

「 ジョー君。 君達のハナシはよくわかったよ。

 君達二人の愛で 両家の対立が収まるならばこんなに喜ばしことはない。 」

「 本当ですか! では 僕達の ― け 結婚を ・・・ 」

「 そうですわ! わたし達 今! ここで挙式したいんです!

 神様の前で ジョーと永遠の愛を誓いたいんですわ。 ね ジョーさま? 」

「 う うん ・・・ 神父さま ぼく達は そのぅ〜 」

熱心に詰め寄る二人を ギルモア神父はまあまあ・・・と宥めた。

「 わかった わかった。 しかし 今は二人とも家に戻りなさい。 」

「 え〜〜 なぜですの? 」

「 神父さま〜〜 ぼく達 真剣なんです!

「 わかった、と言っておる。 ワシからヴェロナの大公に話し 大公から

 二人のご両親を説得していただこう。 それならよいだろう? 」

「 今 式をしてはいただけませんの? 」

「 ぼくは ― それがぼくの使命だと信じています! 」

「 あ〜〜〜 わかっておるよ。 二人とも何回同じことを言わせるのかね?? 

 モノゴトは焦ってはいかん。 

 ジョー、君が先に家に戻りなさい。 お嬢さんは乳母どのに迎えにきてもらおう。

 それなら 目立たずにすむからね。 

「 ・・・・ 」

「 ・・・・ 」

恋人たちは 熱い熱い視線を絡めあい ― でもキスひとつ交わせぬまま 

それぞれの家に戻っていった。

 

 

 ― その頃、 ヴェロナの広場では ・・・・。

 

 

Last updated : 01,10,2017.                 back     /     index    /   next

 

 

********* またまた途中ですが

え〜〜〜 ・・・ なんだか勇ましい姫君ですな

真面目に ロミジュリ をやりたかったのですが

結末は ・・・??